自分を勇気付け、立て直していく方法

今日から「はてな」でお世話になります。
よろしくお願いします。


私は、以前からピアニストのフジコ・ヘミングさんが聴覚を失ったあと、
どのようにして自分を支え、ピアノを諦めずに生きてこられたのだろうか
知りたいと思っていました。

たまたま、昨日の新聞広告で文庫の新刊
フジコ・ヘミング 魂のピアニスト』が
紹介されていたので、早速近くの書店で購入し読んでみました。


文章は人となりを現す、と言いますが、
彼女の文章はまるで絵を見ているような感じがします。

聴覚を失った後、どうやって自分を支えてきたかということを
論理的に書いてあるわけではなかったのですが、
きっとこれではないだろうかと思われた箇所がありました。


彼女はある日、本屋さんで、今にも捨てられるような安い価格で
いくつかの本が売られていることに気づきます。

その中の一冊に、第一次世界大戦下で負傷兵を助けながら
生き抜いたドイツの女の子の日記がありました。


「一度失くしたら、もう二度と手に入らないだろう。
 有名な本ならたくさん作られるだろうから、失くしてもまたすぐ買える。
 でも、こういう本は、二度と出版されることはないのだ。

 私は、一人の無名の女性が確かに、そしてしっかりとこの世に
 生きていたことを思った。人のために懸命に生きていたことを思った。

 彼女は、後世に、多くの人に読まれることを望んだのだろうか?
 誰の目に留まることなく、ひっそりと命を終えようとしていたこの本に、
 私は何かとても大切なことがある、と感じた。

 書かれている言葉に、いや書けなかった言葉に、その女性の人生がある。
 私は想像する。そして再び表紙の彼女を見てみる。

 私もまた、自分のピアノを、自分の音楽を続けよう。
 たった一人の人間でもいい。心に届くピアノを弾くのだ。
 そう強く思った。」


国籍が無く難民としてドイツへ留学し、苦労に苦労を重ねる。
やっとバーンスタインに認められる機会を得て、脚光を浴びるかと
思われた時に聴覚を失う。

彼女の落胆たるや想像を超えるものがあったろうと思われます。
どうやって彼女はその絶望から立ち直ったのだろうかと
私はずっと思っていました。


たった一人でもいい。
自分のピアノを聴いてくれる人がいれば、その人に届く音楽を奏でよう。

そう思い直すことで彼女は立ち直れたのではないかと
この文章を読んで思いました。


気持ちが落ち込むとき、凹むときは、誰にでもありますね。
そんな時、人はどのようにして自分を勇気付け、立て直していくのでしょうか?

パーッと気分転換にショッピングをしたり、スポーツで発散したり。
友達と飲んでしゃべったり等、人それぞれいろんなやり方があると思います。

しかし、どうしようもない絶望に近いような落ち込みに対しては
一時的な対処では焼け石に水のようなものです。



彼女の片方の耳の聴力は、少しずつ回復しますが、
バーンスタインが認めるほどの実力を持っていた彼女にとって
それはあまりにも過酷な現実だったのではないでしょうか。

一冊の今にもこの世から消えてしまいそうな本が
彼女を支えました。


その本の女性は、誰から認められようと思ったわけではなく
たんたんと目の前の負傷兵を助けながら日々を送ります。


自分もたんたんとピアノを弾こう、一人でも聴いてくれる人がいるなら、と
ドイツの名もない女の子の言葉にならなかった想いを
想像し、心で感じ取ることで、彼女は自分をささえていきました。


もし、あなたがどうしようもなく凹んだとき。
あなたを支える物語を持ちませんか?
小説でも、実際の人物でも構いません。

ストーリの人物がいつもあなたの心に生きて、
あなたに語りかけてくれます。
その生き様があなたを支えてくれます。


自分を勇気付ける物語を人は幾つか持っておくと
どうしようもなく落ち込んだときにその物語が自分を支えてくれる

ということをこの本を読んで強く感じました。