宇宙の素晴らしい恩恵

長く看病した父が亡くなって、手続きなどが一段落したとき、
私は無性に温泉に行きたい、
のんびりしたい、と思ったことがあります。


そのとき私は、黒川温泉(熊本県。全国的にも有名な温泉地)
の渓流沿いに創られている露天風呂を楽しむことにしました。


ゆったりと、河のせせらぎや虫の声に耳を澄ましたとき、
あらためて素晴らしい自然を感じ、生きていることに感謝し、
心の疲れがゆっくりと解けていくようでした。



私たちは、とかく世間の評価やどう思われているのかを
気にしがちですが、

ただ息をして、見えるものを見、聴こえてくるものに耳を澄ます

その中に、宇宙の素晴らしい恩恵があること
その恩恵を受けている自分であることを知れば、

いかに自分が幸福であるかを感じることができます。




何気なく読んでいた『道元「禅」の言葉』の中に
その時の感覚に近い言葉がいくつもありました。


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・この大自然の中で「生きていけない」と悩んだりするのは
 人間だけだ。頭の中で、「あれだ」「これだ」と理屈をこね回している
 自分だけが、本当の自分であると勘違いしては、困る。

 私たちの身は、「風雨水火なり」なのだ。人間の身体は、
 大自然なのだ。この事実をはっきり把握して生きれば
 生きる喜びがこんこんをわいてくる。


・宇宙の力から見れば、人の考えなんて知れたものじゃないか。


・静かなところで身をきちんと整えて、深く、すーっと意味を吐き出しなさい
 そして、しみじみと、この一息があるから、今、自分は生きている。
 この一息が、自分の人生の全てを動かしている、ということを
 静かに思いなさい。 静かに見つめなさい。


・人間はめまぐるしく変化する世間の上に乗って生きている、と
 思っているが、そうではない。
 自分の目を外界の世から、自分の身体に移してみよ。
 宇宙の生命とともに生活していることを実感せよ。

 目を自分の体に向けて大宇宙にまたがって生きれば、世間で受けた
 悩みや苦しみは、あっという間に消え去る。


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成功のフィードバックをもらうことだけが人生の目的ではありませんね。

生命に宿っている小さな宇宙を感じ、そこに感謝することができれば
多くの人が希望する「幸せ」を手に入れることができます。

英語では、「人生」をjourney(旅)とも言います。


宇宙の素晴らしい恩恵を感じながら、
坦々と、自分の喜びとすること、
世の中に役立つことを続けていくことができれば、
その過程そのものが、旅であり、素晴らしい人生と言えるのではないでしょうか。


世間の評価に惑わされずに、坦々と自分に備わっているものを
開花させていくことができたとき、自然に道は開けてきます。